奥歯の役割

  私たちの歯は、大きく前歯と奥歯に分けられます。それぞれ形に特徴があって、役割も違うのですが、そのことは、毎日前歯と奥歯を使い分けている皆さんもなんとなく認識されているのではないでしょうか。今回はそのなかでも奥歯について詳しく見ていきます。

 奥歯というと親知らずを除いて上下左右の奥の4本を指すことが多いです。手前から第1小臼歯、第2小臼歯、第1大臼歯(6歳臼歯)、第2大臼歯と呼ばれています。
 奥歯の食事のときの役割は、食物を噛み砕いたり、前歯で噛み切ったものをすり潰したりして、内臓での消化・吸収をしやすくすることです。ものを噛むとき、奥歯には自分の体重とほぼ同じくらいの力がかかります。奥歯を1本失うと、ものを噛む力は40%近くも低下するといわれています。
 かみ合わせにおいても重要な役割があります。奥歯のなかの小臼歯は、かみ合わせで下あごが必要以上に奥に行かないようにストッパーの形が刻まれていて、あごの位置を決める役割を担っています。また第一大臼歯は、奥歯をしっかりと噛みしめたとき、かみ合う高さを決める役割を持っています。
 他にも奥歯の役割として、以下があります。
1.発音…どの歯にも言えることですが、歯が欠落しているとそこから空気が漏れて聞き取りにくい発音になります。奥歯は特に、「ハ行」や「ラ行」の発音を助けます。
2.歯並び…正しい歯並びは奥歯が基準となっています。失った奥歯をそのままにしておくと噛みあわせが悪くなり、やがて歯並びや顔の輪郭形成にも影響が出てきます。
3.からだのバランスと瞬発力…重たいものを持つときやスポーツをするとき、奥歯で食いしばることがあると思います。奥歯で食いしばることで体の体幹を固定し、瞬発力を得ているのです。奥歯でしっかり噛めるということは高齢者の転倒事故の予防のためにも大切だと言われています。

 奥歯は前歯に比べて寿命(歯を失ってしまうこと)が短く、それは長年の酷使と、歯ブラシが届きにくくケアがおろそかになりがちなこと、などが原因とされています。これからは、奥歯を意識したケアを行って、その大事な役割をできるだけ長く果たしてもらえるよう大切にしましょう。