味覚を育てる

 モノを食べるときに私たちは、味、香り、歯ごたえ、温度、見た目、食べたときの音 などを感じ取っています。これらの感覚を総合して感じるものが味覚です。味覚は人によってさまざまで、「味覚が鋭い」人もいれば、「味音痴」などと言われる人もいます。同じ食べるのであれば、できるだけ繊細な部分まで味を感じたいものです。
 味覚は生後3ヵ月ごろから子ども時代…3歳までにほぼ決まり、10歳くらいまで…に確定すると言われています。
子どものころは、味を感じる味蕾(みらい)という器官が敏感で、この時期に経験した味は微妙なところまで感じ取れます。また、苦いものや辛いもの、酸っぱいものなど、刺激のあるものは、過敏に感じてしまい、あまり好みません。これが子どもたちに好き嫌いが多い原因のひとつです。
大きくなるにつれて、味蕾の感度も鈍くなり、数自体も減ってきます。苦味や酸味、辛味なども、味蕾が減るに連れて刺激が和らぎ、同時に慣れてくることによって味覚が発達して、人によって好んで食するようになっていきます。

 豊かな味覚を育てるためにはどのようにすればよいでしょう。まずは小さいうちからいろいろな食材や料理を経験させることだといわれています。素材そのものの味を覚えることは大切なので、だしを効かせてできるだけ薄味にして、というと和食が中心になりそうですが、いろいろな料理ということで和食にこだわることはないでしょう。苦手な食材については、切り方の工夫や、じっくり煮込む、とろみをつけるなど、食べやすさも考えてあげましょう。また、食品添加物は味が強すぎるものが多いので、できるだけ避けましょう。食べるときはよく噛むことを教えてあげましょう。味蕾は舌だけでなく上あごやのどにもあるので、よく噛むことで味をより深く感じることができます。
 食事を楽しいものにすることも大切です。家族全員で食卓を囲んで、楽しい雰囲気を作ることも味覚の発達には大きな役割を果たします。食事中の会話は楽しいものですが、その日の食材や料理も話題になれば、食事に対して興味が湧くことに繋がり、それは味覚を育てるために非常に有益です。
声かけもしてあげましょう。いままで苦手だった食べ物もお母さんに励まされたら、「ちょっと苦手だけど食べてみよう」と思ってくれたり、ひと口でも頑張って食べたときは褒めてあげたりすれば、食べる意欲が育ってきて、ある日ウソのように食べられるようになることもあります。
好き嫌いが多くて心配だとしても、無理強いや強制はあまりよい効果は期待できないでしょう。