歯根破折

歯根破折」と聞いても耳慣れない言葉ですが、歯根破折は抜歯の原因として歯周病、むし歯に次いで3番目で、意外と多い疾患です。
「歯根」ですから歯が根元部分の中から割れてしまう症状で、歯茎から上の見えている部分の破折は「歯冠破折」と言われます。
歯根破折
 歯根破折は内部から進行するため気付きにくいのですが、歯根のひびから細菌が入り込んで増殖すると、噛むと違和感が出たり、歯茎を押したときに痛みが出たりするほか、歯茎が腫れたり、膿が出たりします。
ひどくなってくると噛むことができなくなってしまいます。

 その原因は、歯に長期間負荷がかかり続けて、小さなひびが入ってしまうところから始まることが多いとされています。
むし歯の治療で神経を抜いた歯に起こることが多いです。
 これはひとつには、神経を抜いた歯の場合は、歯に栄養分が行きわたらずに内部から割れてしまい、破折となってしまう可能性が大きくなるからです。
 もうひとつは神経を抜く治療の際に、硬い金属の土台を詰めることも原因となることがあります。硬い金属の土台にすると、天然歯のようなしなりが効かなくなり、上や横からの力に対する耐久力が落ちるため、食いしばりや歯ぎしりなどのストレスにより疲労し、破折してしまうことがあるのです。

 歯に長時間大きな負荷がかかる歯ぎしりや噛みしめといった癖も、歯根破折の原因となりえます。歯ぎしりや噛みしめは主に睡眠中に出る癖ですが、無意識のうちの日中の噛みしめや、普段から上下の歯が接触してしまう癖(上下の歯は何かを食べたり、呑み込んだりするとき以外は触れ合っていない)などにも注意が必要です。

 なってしまうと厄介な歯根破折ですので予防が大切です。歯ぎしりや噛みしめを防ぐには睡眠の質の改善といわれてますが、難しい場合にはマウスピースの使用も検討するとよいかもしれません。日中の上下の歯の接触や噛みしめに気づいたら即座に深呼吸をすることがよいそうです。
 神経を抜く治療には土台に固い金属を使う代わりに(保険適用外の場合もありますが)グラスファイバーを用いることで、歯根への負荷を減らし破折を防ぐ効果も期待できます。
 治療の面でも、早めに治療すれば抜歯せずに、接着剤で割れ目をふさぐ接着治療を行っている歯科医院も出てきています。

 歯根破折は気づきにくいですが、早期発見で治療の幅も広がります。歯科医院の定期健診なども活用して、特に神経を抜いた歯などには、その状態に気を付けましょう。