学校歯科医と学校歯科保健

 大人の方もお子さんたちも、学校に来られた町の歯医者さんに歯科検診をしてもらった経験が有ると思います。これは学校歯科保健という活動のひとつで、学校で歯を見てくれた歯医者さんは学校歯科医と呼ばれています。1931(昭和6)年に公布された「学校歯科医及幼稚園歯科医令」でその制度が定められていますから長い歴史をもちます。
現在は学校の先生や職員の方と連携を図り、学校歯科保健活動の中心的な役割を担っています。
学校歯科保健は、従来の病気を早く見つけて治療するという活動だけにとどまらず、歯や口の健康つくりを学び、生涯を通じて健康な生活を送る基礎を培うための「健康教育」活動に広がっています。学校での健康診断は、それぞれの歯や口の状態を把握して、むし歯や歯周病になってしまい治療が必要な人は治療をする、まだそこまでではないけれど、むし歯や歯周病になりかかっている人であれば、歯みがきや食事の工夫で予防をするといったことがまず重要です。そして、それと共に、むし歯や歯周病にならないようにするにはどうしたらいいか、健康であるためにはどんな生活をしたらいいのか、を考え学ぶ機会でもあると捉えられています。
例えば、現在の学校健康診断の評価に「要観察」というものがあります。むし歯であれば「CO」(シーオー)、歯周病では「GO」(ジーオー)と言われています。COの場合、脱灰と再石灰化のバランスが崩れ、脱灰が進み始めたところで,このまま放置するとむし歯になるリスクがあるものの、口腔清掃や食習慣により改善する状態を表します。GOの場合、歯肉に腫脹、発赤や軽い出血がみられている段階ですが、ブラッシング等でこちらも改善できる状態です。「CO」「GO」という評価があり、それに対処することで、子どもたちは自らの努力によって病気から回復できることがあると学ぶことができます。

学校歯科医は健康診断だけではなく、授業や保護者も参加できるような講演をしたり、配布物の制作にも関わります。歯のみがき方を始め、むし歯や歯肉炎などの病気の予防、食生活のあり方など、歯・口の健康づくりに必要な基礎的なことを生徒児童や保護者の方に理解してもらうための活動です。
また、保健所、地域歯科医師会、地域学校歯科医会、町内会・自治会など地域の医療機関や関係団体や行政機関とも協力し、子どもが歯・口の健康づくりを実践できる環境を整えることも学校歯科医の役割のひとつです。
このように学校歯科医の役割は多岐にわたり、地域と連携して子供たちの健康作りに寄与しています。